リフォーム業者を決めるにあたって複数の会社の相見積もりをとることはとても重要ですが、その過程をすっ飛ばしたまま、私は見積もりをとった唯一の業者さんのショールームの見学に行きました。思い返せば、そこでも「あれ?」と思った点がいくつもあったのに、なぜかその時は大して気にも留めず、せっかくのサインを見逃してしまったのでした。
ショールームといっても、いくつか部屋があって比較できるわけではなく、防音工事を施した部屋が一部屋あるのみでした。部屋のなかにはソファなどの家具と電子ピアノが置いてあり、ぱっと見は普通のお部屋。壁はオトカベ(L80)施工、ドア部分には海外製のガラスドアが設置してありました。このドアは防音性能がとても高く、「大建工業のドアの2枚分の性能」があると説明がありました。
部屋から外に出てどの程度音漏れがあるかを確認するため、電子ピアノの音を鳴らしてくれました。最初に流してくれた曲はエルガーの愛の喜び。耳には心地よいですが、音数が少ない上に、中音域しか使われていない曲なので、これを流してもらったところで防音効果がいかほどかの判断はできないと思い、もっと音域が広く音数も多い曲にしてほしいとお願いしました。すると今度はロックミュージックを流してくれました。手元の軽量騒音計では80~85デシベル程度。先日の現地調査では、家の裏の勝手口の外で90デシベル近かったのですから、室内で少なくとも90デシベル以上の音を出さないと意味がないように感じました。そこで、ピアノの音と同様に90~100デシベル程度の音を出して欲しいとお願いしました。
部屋から出て、そこに設置してある海外製のドアを閉めると、驚くほど音が小さくなりました。なるほど、こんなに音が止まるんだ、と思ったものです。ただし、ここにはこのドアしか設置されておらず、他の防音ドアとの比較はしていません。それなのに私は「このドアはすごいんだ。さすが大建工業のドアの2枚分!」と早合点してしまいました。後日、大建工業のサウンドショールームで大建工業のドアの遮音効果も実際に体験しましたが、約20万円の防音ドアで少なくとも同等、約50万円のドアだとそれ以上の効果を感じました。やはり何事も比較検討が必要ですね。
建物から外に出て防音室の横の道路に立つと、ロックミュージックの低音はわりと響いていましたが、中高域の音はほぼ聞こえなくなっていました。社長さんは、ここでは防音室の外に漏れてくる音は騒音計で測りませんでした。私もなぜかその時はそれを気に留めず、ただ「低音以外は結構止まってるね」と思っただけでした。
これは後に理解したことですが、ショールームを見学した時間帯は、まだあちこちから生活騒音が聞こえていて、そもそも屋外が騒がしい状態でした。ですから、そのなかで「音が止まっている」と感じても、騒音計の数値を見ない限り、実際どの程度防音効果があったのかは判断できるはずがなかったのです。私が別の業者さんのショールームにも足をはこんでいたら・・・。そうすれば、もっと冷静に判断をくだすための情報を得ることができたに違いありません。
屋外で防音室から漏れてくる音を確認した後、部屋に戻って、今度は会長さんも交えて話をしました。和気あいあいとしたお話はとても楽しかったです。
この業者さんの防音工事の特徴は、一般的な工事と違って部屋を狭くせずにできること、だそうです。それだけ中に詰める断熱材に高い防音性能が見込めるから。
話が「窓」に及んだとき、私は前々からガラス屋さんだけは別に頼みたいところがあるとお話ししました。会長さんは、私が依頼しようとしていたガラス屋さんの社名を聞いて、そこは昔からあるガラス屋だから、窓だけはそっちに頼んだほうがいいかもしれないが、壁はうちにしたほうがいい、とおっしゃいました。その時社長さんが「うちは○○という製品を使っているんですが」と話してくださったのですが、その製品名を、何度も何度も間違えておっしゃるのです。(その内窓も有名な製品なので、私も名前はよく知っていました。) 製品名、違うのにな、と思いつつも、わざわざそこで訂正するわけにもいかないので聞き流していました。通常は、普段工事に使う製品名を間違えて覚えてたり間違えてお客さんに伝えたりすることはないと思うんですよね。この時私は心の中で「あれ?なんで間違えてるんだろう」と思ったのに、結局スルーしてしまいました。
また、窓の工事と壁の工事をどのような順番で進めようかという話になったとき。なるだけ早い時期に両方の工事が完了しないとピアノが弾き始められない、と話が及んだところで、会長さん曰く「壁が終わったら、その後は窓のところに防音カーテンをかけてたらいいんですよ。」 いくら防音効果が高いカーテンでも、ピアノの音漏れを防ぐほどの効果が見込めるカーテンなどありませんよね。この時はただのジョークかと思って笑って流しましたが、考えてみたら防音工事を専門とする業者さんの言葉ではないような気がします。
ちなみに、「○○市防音工事」で検索するとこちらの業者さんが一番上に来たことを伝えると、「うちは広告は~~に頼んでて、どんな広告が出てるか知らないんですよ」という答えが返ってきました。それに、「広告がいくつも出ているから、あなたが話しているのがどれなのか分からない」とも。確かにこの会社、広告がころころ変わります。最近HPを見てみると、初めて目にするページが出ていました。逆に以前私が見たページはもうなくなっているようでした。
ショールームの見学中、「何かが違う」ことに気づくきっかけは何度もありました。にも関わらず私はそれらを全部見逃してしまった。その原因は何かと考えたとき思い当たるのは、名のある会社に依頼すると高くて手が出ないだろうという諦めと、大手でなければ費用面でも効果の面でも大差はないだろうという勝手な思い込みでした。さらには、比較をする手間を面倒に感じてしまったこと。そのために先々大変な思いをすることになろうとは、この時は想像だにしませんでした。